エルブジ。
泣く子も黙るスペインの超有名レストラン。
私も、仕事でスペインに行ったときはさすがに予約が取れなかったし、
ちょうど当時のクライアントだった会社の、
マンサニージャの買い付けでアンダルシアをぐるりと回っていたので、
エルブジのホテルの方には行きました。
なんていうの、
「フェラン・アドリアの化石博物館」みたいな感じで(超失礼)、
メニューには、何年に作られた料理、って感じで出てるのね。
数ヶ月前から取材依頼を現地の辣腕コーディネーターに頼んでいて、
粘り強い交渉を重ねてたどり着いたにもかかわらず、
ものすっごく感じが悪く、コーディネーターさんが怒り出して帰ろうと言い出すくらい。
それで慌てたフロントスタッフがようやくデジタルの資料をくれたり、
ムニュ・デギュスタシオンではあるけど料理を食べていってくれと言われ、
スタッフとは超険悪な雰囲気で用意された席に着く。
ちょうど三ツ星に昇格したばかりで、
お祝いのカヴァです、と出てきたカヴァのグラスがチップしていたりして、
もうあり得ないだろくらいな勢いで怒ったら、
スタッフはチップをしていることを私は話していなくて、三ツ星について話してるとか、
訳の分からない言い訳をしてたりして。マジ感じ悪い。
と、そんなことはともかく。
そこで出されたムニュ・デギュスタシオンは、
まるでお菓子のようなアプローチのタパスばかりだった感じなのだけど、
中にはとても面白いものも当然あるわけで。
メロンのキャビアやパルメザンの長いパスタみたいのとか。
そのなかで、面白いけど、東洋人にはすぐばれちゃうね、ってネタがあった。
その名も「電気仕掛けの牛乳」。
ウェイターがやってきて、1枚ずつ皿にのったそれを、
「口に入れて噛まずに30秒じっとしていて下さい」という。
口の中にはミルクの甘やかな味わいが溶けてきて、
しばらくするとぴりぴりと金属的な刺激が走る。
その正体は何か。
答えは、東洋人には簡単。
山椒だ。青いやつね。
山椒独特の香りと優しい甘さ、あとから来る金属的な刺激。
欧米人の食の中にない「スパイス」だから、
そりゃさぞかし驚くだろうと思うわけです。
だけどね、
今日、それを上回るすごい物を発見してしまった。
ちょっと気を持たせちゃうけど、その話はあとにするとして。
帰ってからしばらくして、
仕事ともろもろの買い物で疲れた私に変わって、
今日は相方が食事の支度をしてくれた。
引っ越してからキッチンの作りの問題で料理がしにくいらしく、
キッチンに立っていなかったのだけど、
この間風邪を引いてからごはんを作ってくれることが多くなった。
ともかくごはんを食べよう月間(笑)なので、
酒のお供でも、ごはんのお供でも良いような物を。
まずはあっさりめに皮付きのままたいた肉じゃがと、

蕪の塩もみ。

本当は塩昆布で揉む予定だったんだけど、
私が塩昆布を買ってくるのを忘れてしまって、塩で。
残っていた最後の花柚子の千切りが一緒に和えられたもの。美味。
それから、最近近所のスーパーで、
毎日空輸されてくると言う薩摩揚げ。これは烏賊の物。

これもなかなか上手いのよ。
それと興味本位で買ってきた物その2。

空っぽだった辛子蓮根の棚のとなりにあった、
「おさしみゆずこんにゃく」というもの。
柚子が練り込んであるんだけど、それほど香りは強くない。
なので、柚子胡椒を添えて。
今日は頑張ったのでワインを開ける。頑張らなくても開けるけど(笑)。

キンタ・デル・カルメン。
ラス・メニーナスでも飲んでるカディスの白。
シェリー樽で寝かせた風な風味の、おそらくパロミノのワイン。
おかず、美味しかった。
ワインも美味しかった。
でもね、これに負けちゃった。
それがこれ。

売っていた棚には、
「実山椒」としか書いてなかった。
小さな瓶に入って、たった500円の代物。
でも、実山椒がペースト状になっているのは面白いなと思って、
裏面の内容物をチェックして、他のいろんな物と共に買ってきた。
いかにも道の駅当たりで売っていそうな風情の、
インクジェットで普通紙にプリントしたラベルと、
裏面に入ったふさ子のフルネーム。
もうね、エルブジよりはるか上を行っちゃってます。
使っているのは山椒と塩だけ。
そのままほんの少し口に含むと、
最初に山椒独特の甘みが口に拡がり、爽やかな香りが拡がり、
しばらくすると金属的な例の刺激が来る。
しょっぱくはない。絶妙の塩加減。
で、これをごはんに載せる。
耳かきに大盛り1杯くらいの感じで。
もうね、それだけでごはんが食べられる。
本当に美味しく食べられる。
ごはんに綺麗に混ぜ込んだら余計に美味しい。
お代わりなんかすぐ行っちゃうくらい美味しい。
私の頭の中で、この新しい「ふさ子の台所」の使い方に関するイメージがどんどんと膨らむ。
あれに使ったらどうだろう、こんなのは?と。
調味料ひとつでこんなにインスピレーションが湧くことってそうそうない。
ふさ子さん、完敗です。
美味しかったおかずやワインの記憶は遙か彼方。
そんなわけで、私にとっては、エルブジよりふさ子の台所が上ってことで。
ふさ子バンザイ。